言い訳

お題:「昼の遊園地」 「言い訳する」 「プレゼント」

真昼でも冬の遊園地は寒かった。
「さむ…」
彼女は小さな手に息を吹きかける。
…計画通り。
僕はポケットから女物の手袋を取り出し投げ渡す。
「寒かったら使えば?」
「でも…これ…?」
「やるよ」
こんな言い訳がましい方法でしかプレゼント一つ渡せない僕に、彼女は満面の笑みを向けた。

(2011.12.17)
| ちいさなおはなし | 16:18 | comments(0) | trackbacks(0) |

お題:『この先に何もないと知っている・君には分かるまい・悲しみを放り投げて』

掌の中に硬く生温かいものを感じつつ、僕は無言で彼女の前に立っていた。
駅の改札。
この先、何もないことは知っている。
けれど最期の一言が言えない。
こんな感情、きっと君には分からないだろう。

僕はゴミ箱に掌の中の鍵を放り投げた。
それはまだ温もりの残る、僕の悲しみそのものだ。

(2011.11.23)


掌に残る温もりこの鍵は僕の悲しみそのものでした
| ちいさなおはなし | 14:15 | comments(0) | trackbacks(0) |

お題:『か細い声が耳に残る・あたたかな体温・一緒でいい、一緒がいい』

あたたかな体温を左腕に感じていた。
放課後の理科室。
遠くで騒ぐ声が聞こえる。
「…そろそろ帰らなきゃ」
僕の腕に頭を預けたまま彼女が呟く。
「うん、別々に出ようか」
少しの沈黙。
「…一緒でいい」
「…え」
「……一緒が、いい」
掠れたか細い彼女の声がいつまでも耳に残る。

(2011.09.04)
| ちいさなおはなし | 16:23 | comments(0) | trackbacks(0) |

うさぎ

お題:『誘う術を教えて・淋しくても死なないうさぎ・まどろみに沈み込む』

わたしはうさぎ。
淋しくても死なない方のうさぎ。
毎晩耳をぴんと立ててただひたすら夜の足音が近付くのを待っている。
けれど夜のヤツ、なかなか捕まってくれないの。
誰かお願い。眠りを誘う術を教えて。
わたしはうさぎ。
真っ赤な目をして、今日も明け方ようやく微睡みに沈み込む。

(2011.08.25)
| ちいさなおはなし | 16:46 | comments(0) | trackbacks(0) |

お題:『夢は夢のままで・あたたかな体温・ビロードのような舌触り』

それはまるでビロードのような舌触りがした。
あたたかな体温、心地良い香り、耳をくすぐる鈴のような声…。
それを抱きながら、半分覚醒しかけた頭で僕は考える。
これでいい。
夢は夢のままでいい。
現実となった瞬間に、余分な重荷までついてきてしまうのだから。
責任、という名の。

(2011.08.23)
| ちいさなおはなし | 16:46 | comments(0) | trackbacks(0) |

線路

お題:「早朝の歩道橋」 「抱きしめる」 「線」

早朝の歩道橋で彼は突然私を抱きしめた。
「人が…」
「…誰も居ないよ」
これから数時間かけて帰らなければいけない。
次に会える保証もない。
そんな現実に圧し潰されそうになっていた。
彼も、同じだったのかもしれない。
朝靄の先へ続く錆びた線路が、二人を繋ぐただ一つの約束に見えた。

(2011.08.20)
| ちいさなおはなし | 16:44 | comments(0) | trackbacks(0) |

お題:『昼のキッチン』 『夏』

夏の真昼のキッチン。風もない。
クーラーでもかけないと死にそうだ。
「ねぇクーラー…」
「勿体無い」
身も蓋もない。
仕方ない、奥の手だ。
「ほらPC何か音おかしくない?」
「え…」
「暑いんだよ部屋」
「…仕方ないな」
彼は私よりPCの方が大事。
そんなこと、もうとっくに知っている。

(2011.08.20)
| ちいさなおはなし | 16:43 | comments(0) | trackbacks(0) |

猛毒にも似た

お題:『猛毒にも似た君の声・名前を呼んで、その声で・ときめきをください』

それは猛毒にも似ていた。
一度体内に入ると芯が麻痺してしまうかと思うほど強力な。
だから僕は毎日懇願する。
何気ない日常会話をするふりをして、君のその声が僕の名を告げる瞬間を待ち続ける。
どうか名前を呼んでくれ。
一瞬のときめきを、この凍りついた心に与えて欲しいだけなのだ。

(2011.08.20)
| ちいさなおはなし | 16:42 | comments(0) | trackbacks(0) |

お題:『どこにいけば君に出会えますか・全てを忘れさせてください・手招きする指の美しさ』

どこに行けば君に出会えるのか。
夢の中でいつも僕は、手招きをする白く透き通るような美しい指にそう問いかけていた。
この指が夢に現れるようになって数ヶ月、そう、あの日から。
きっと僕はこの奇妙な夢に全てを忘れさせて欲しいのだ。
君が、僕の元から永遠に去ったという事実を。

(2011.08.17)
| ちいさなおはなし | 16:41 | comments(0) | trackbacks(0) |

拝啓、

お題:『どこにいけば君に出会えますか・どこにいても気にしてる・拝啓、僕の好きな人』

拝啓、僕の好きな人。
最近どこにいても何をしていても君を気にしてしまいます。
どこにいけば君に出会えますか。
そもそもどこに住んでいますか。
本当に実在しているんですか。
あまりに君が遠すぎて、まだ君をリアルに実感出来ずにいます。
ねぇ、こんなものでも恋と呼べるのでしょうか。

(2011.08.15)
| ちいさなおはなし | 16:39 | comments(0) | trackbacks(0) |

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